車があるからもっと楽しい。まだ知らない熱海の魅力に出会う旅

レトロな雰囲気の商店街で食べ歩きをしたり、海辺の散歩を楽しんだり。なんとなく歩いて観光をするイメージの強い熱海ですが、車があれば、楽しみ方はもっとずっと広がるはず。

そこで今回は、熱海市出身の編集者・水野綾子さんに教えていただいたおすすめのスポットを中心に巡る、「熱海日帰りドライブ旅」を敢行。急な山道をのぼったり、南の方まで足を伸ばしたりと、車移動のメリットを存分に活かしたスポットを訪れるなかで、まちの中心部とはまた違った、熱海の新しい魅力が見えてきました。

教えてくれた人 水野 綾子さん

編集者、僧侶。出版社で雑誌編集を経て、企業のPRやブランディング、経営戦略などに従事。仕事は続けながら、2017年に家族で熱海にUターン。熱海のまちづくりにも関わり、企業の人材開発支援などに取り組む。2025年に実家のお寺の副住職に就任。「熱海千魚ベースプロジェクト」「僧侶の働き方研究所」代表。

目次

熱海唯一の酵素風呂を体験。静かな山間に佇む「妙樂湯」で身も心も解ける時間を

この日は、月に一度の「熱海海上花火大会」の日。まずは、水野さんがよくご家族で訪れるというお気に入りスポットを目がけ、早くから人で賑わう熱海駅を横目に、国道135号線を車でぐんぐん走っていきます。

長浜海浜公園を通り過ぎ、国道を一本外れると視界に入る景色は海から山へ。静かな山間にあるのは、ほぼ住宅のみ。「本当にこんなところに温泉が……?」とやや心配になりながら、狭い山道をどんどんのぼっていった先に、「妙樂湯」が見えてきました。

利用者専用の駐車場に車を停めて外に出ると、気持ちのいい風が通り抜けて思わず深呼吸。耳をすますと、川のせせらぎが聞こえてきます。どうやら、すぐ近くに川が流れている様子。

熱海駅からはわずか20分ほどの移動ですが、想像以上に自然豊かで、穏やかな空気が流れていることを感じます。

古民家づくりの落ち着いた雰囲気の「妙樂湯」は、山本さん一家が営む日帰りの温泉施設。赤ちゃんからお年寄りまで安心して入れる弱アルカリ性の単純温泉に加え、酵素風呂を楽しめるのが特徴です。

レンタルの酵素着に着替えて扉を開けると、ふわっとぬか床のような独特の香りに包まれます。米ぬかと国産ヒノキやスギのおが粉を混ぜ合わせて、発酵させているのだそう。

いい発酵状態を保つには、ぬか床と同じで毎日かき混ぜることが必須。メンテナンスが大変なこともあり、熱海市内で今酵素風呂をやっているのは「妙樂湯」だけなんだとか。

“娘婿”として結婚を機に「妙樂湯」で働くことになった重雄さんは、以前は専門誌のライターさんだったそう

2代目の山本重雄さんが、シャベルで掘ってくださった穴の中で埋まること15分。約60℃の中で、10〜15kgのずっしりとした心地の良い重みを感じながらぼーっとしていると、だんだん全身の毛穴から汗が吹き出してくるのがわかります。

重雄さん曰く、酵素風呂の一番の効果は「内臓を温めてくれること」。それによって、免疫力アップが期待できるのだとか。汗はだくだくと流れるものの、じんわりとした熱さで息苦しさもなく、サウナが苦手な人やお年寄りでも入りやすそうです。

酵素風呂から出て米ぬかやおが粉をシャワーで流したあとは、そのまま温泉と露天風呂でさっぱり! クセのないやわらかなお湯に包まれて、肌もつるつるになりました。

川向こうにある山本家の畑で、無農薬栽培した梅を使用

地場のヒノキをふんだんに使ったという休憩処は、ゆったりと落ち着ける空間。眠気に身を任せてうとうとしたり、旬の自然素材にこだわったやさしいお食事を楽しんだり。自家製の梅ジュースは、たっぷり汗をかいたからだにすうっと染みわたる、爽やかなおいしさです。

ぽかぽかの全身を投げ出してくつろいでいると、時折「ホーホケキョ」という美しいさえずりが。あまりにいい声なのでBGMかと思いきや、本物のウグイスの鳴き声なんだとか。重雄さんのパートナーさんによると、「少し前から声を出す練習を始めて、今が一番上手なんですよ」とのこと。なんと、やさしい世界……。

「『妙樂湯』が、熱海旅行のひとつの目的地になってほしい」と話す重雄さん。温泉や酵素風呂はもちろんのこと、ゆっくり流れる時間や自然の音色、そして働く皆さんのあたたかさに存分に癒される時間でした。

妙樂湯
〒413-0102 静岡県熱海市下多賀1118-8
TEL:0557-67-5526
営業時間:

平日 10:00~19:00(最終受付18:00)
土日祝 10:00~20:00(最終受付19:00)
※酵素風呂は10:00~16:00まで、お食事は11:00~16:00
定休日:火曜、水曜

旧小学校をリノベーションした「むすび食堂」でいただく、“地産地食”の素朴なランチ

熱海の南部にある網代(あじろ)は、相模灘に面した歴史ある漁師町。カモメが空を悠々と飛び回り、道端では猫がごろごろ。どこかのんびりとした風情が漂います。

廃校になった小学校を活用した施設でランチを食べられるとウワサを聞き、やってきたのが「AJIRO MUSUBI」。もともとグランドだったスペースが、およそ50台ほど停められる無料駐車場になっています。 運営する一般社団法人あじろ家守舎の代表・山崎さんは、この旧網代小学校の卒業生。熱海へUターンしてきた当時、廃校となった母校の活用が進んでいなかったことを受け、「学びを起点に人とまちを結ぶ、まちの交流拠点」として地域の人たちと一緒にこの場をつくっていったのだそう。

1階のコミュニティスペースは、もともとは食堂。テーブルが置かれているほか、まちの人たちが選書した本棚や、地域の歴史に触れられるコーナーも。

おしゃべりをするもよし、カフェを利用するもよし、本を読んで過ごすもよし。まちの公園のように、さまざまな過ごし方を肯定する場なんだとか。子どもたちが自由に遊べるキッズコーナーもあるので、お子さん連れのファミリーも過ごしやすそうな雰囲気です。

その中の「むすび食堂」では、“地産地食”をコンセプトにしたメニューを提供。地元食材をおいしく食べてほしいという思いから、地元で獲れた魚や干物、周辺地域で収穫された野菜や果物を使っています。調理を担当するのは、網代に移住してきた方や、地元のご近所さんたちです。

「迷ったら、地元食材のランチプレートか干物定食の中から、気になるものを選んでみてください」と勧められ、注文したのは「網代サバのハーブ焼き」。

サバは、網代港で水揚げされた地元食材。ローズマリーやタイムで香りづけしてから焼き上げているそうで、テーブルに到着したときから食欲をそそるいい香り! サバの味が濃くて、噛むたびに旨味が口の中で溢れます。

この日の付け合わせは、紫にんじんのラペ、ビーツの胡麻和え、くるみ味噌で焼いたホワイト玉ねぎ、そしてタケノコの煮付け。こちらも、シンプルな味付けによって一つひとつの素材のおいしさが際立っているのを感じました。

干物定食「聞直(ききなお)商店のアジの干物定食」。聞直商店は網代にお店を構える老舗干物店で、ご飯に合う干物が自慢なんだとか

派手さはないけれど、からだや地域を想う、素朴でやさしいごはん。それに、小学校だった場所でごはんを食べるというのは、無条件にちょっとワクワクしてしまうもの。ここは、大人もどこか童心に帰ってのびのび過ごせる、“みんなの居場所”なのかもしれません。

むすび食堂
〒413-0103 静岡県熱海市網代195
TEL:050-8893-2726
営業時間:11:00~17:00(LO16:00)
定休日:火曜~木曜

地元の小さな干物屋さん「丸亀名産店」が誇る、“日本一の塩辛”をお土産に

「よかったら、車を置いたままぜひお散歩してみてください」というスタッフさんの言葉に甘え、なんとなく潮の匂いのする方へと歩いていってみると、5分もかからずに海に到着。

遠目で眺めるばかりだった海も、よく見てみると透き通っていて、波も穏やか。太陽に照らされてきらきらとかがやき、「熱海の海ってこんなにきれいだったのか……!」とあらためて感動します。

行く先々で絶賛日光浴中の干物がたくさん見られるのも、港町ならではの光景。海や、干物や、ごろごろ寝転がる猫を眺めながら15分ほど歩いて向かった先は、「丸亀名産店」です。水野さんが教えてくださった地元の干物屋さんで、なにやら珍しい塩辛があるのだとか。

到着すると、お店の軒先で3代目の森野昇さんが昔のドラマの再放送を見ながら、アジを捌いていました。その感じも、港町の日常っぽくてなんだかいいなあ、と思わずにっこり。

創業60年以上。もともと漁師だったおじいさんが始め、今は昇さんとその息子の聡さんが中心になってお店を切り盛りしているのだそう。家族経営の小さなお店だからこそ、大量生産も作り置きもしないのが「丸亀名産店」のモットー。小さな子どもからお年寄りまで安心して食べてもらえるようにと、保存料・着色料は一切使用せず、昔ながらの製法・味を守ってきました。

“日本一”と呼び声の高い塩辛の秘密も、その製法にあります。イカの皮をすべて剥き、天日干しにしてからつくるので、イカの旨味が凝縮されるのだそう。そして、味の決め手になる秘伝のワタは、約3か月熟成することで、深みのある味わいになるといいます。

水野さんによると、「イカの軟骨部分が入った“あたま”の塩辛が、コリコリしていて絶品!」とのこと。この「イカなんこつの塩辛」と、希少なクチバシ部分が贅沢に入った「イカトンビの塩辛」の2本を無事ゲットしました。

瓶のキャップのラフな手書きの文字も、なんだか味わい深い

塩辛をひと瓶つくるのに、なんとイカを約20杯(!)も使うのだとか。この日も、「朝イチで塩辛をつくったよ」と話す昇さん。こうしてつくり手の顔が見えると、ただでさえおいしい塩辛も、きっと何倍もとくべつに感じるはず。

別れ際、昇さんが教えてくれたのは「一番最後は瓶の中にご飯を入れて、かき混ぜて食べる人もいるよ」という、なかなかワイルドな食べ方。旅から帰ったあとの日々もぐっと楽しみになりました。(塩辛は日によってはないこともあるので、事前にお電話での確認がおすすめです!)

丸亀名産店
〒413-0102 静岡県熱海市下多賀141−17
TEL:0557-68-0510
営業時間:8:00~18:00
定休日:年中無休

アーティスト夫妻が営む「薬膳喫茶gekiyaku」の、センスが光る薬膳メニューでからだを労わる

網代を後にし、ふたたび熱海駅方面へと車を走らせます。次の目的地は、駅の反対側。來宮(きのみや)神社を通り過ぎて、また山道をぐんぐんのぼっていきます。これがまた、なかなかの急斜面。

「妙樂湯」のときと同じく、「本当にこんなところに……?」と心配になりながら進んでいくと、高台にぽつんとお店らしき建物が見えてきました。「薬膳喫茶gekiyaku(ゲキヤク)」です。(駐車場はお店の上方にあり)

「アーティスト夫妻が営む、感性が行き届いた空間。高台からの景色も心地良く、ゆったり静かな時間を過ごせます」と水野さんが教えてくださったここは、薬膳をテーマにした喫茶店。都内を拠点に内装設計やデザインを手がけてきた近藤尚さんが、妻・鈴木夢乃さんのおじいさんが別荘として使っていた空き家2棟をリノベーションし、「合宿所yutorie(ユトリエ)」とともにこのお店をオープンしたのだそう。

おじいさんは生前、この家で絵を描いて過ごしていたそうで、クリエイティビティを発揮できるクリエイター向けの合宿所として、一棟貸しで宿泊も受け入れています(最大6名まで)。最近はクリエイターに限らず、アート好きや、インバウンドのお客さんも多いとのこと。

喫茶には、薬膳初心者でも頼みやすい、カジュアルなメニューが並びます。お粥や水餃子、包(パオ)などのお食事メニューも気になるところですが、今回注文したのは杏仁豆腐。しかも、西風(セイフウ)と東風(トンプウ)の2種類あるのが珍しく、欲張って両方お願いしました。

杏仁豆腐(西風)
杏仁豆腐(東風)

西風は、ぷるぷるとしていてすっきりとした食べ応えが特徴。爽やかですっきりとした甘さのシロップは、杏露酒からつくっているのだそう。どちらかというと、私たちがイメージする杏仁豆腐の味わいに近いのはこちらかもしれません。

一方、東風は杏仁豆腐というよりも、お豆腐のようなビジュアル。口に運んでみると、なめらかでトロトロそしてクリーミー! 烏龍茶を煮出してつくっているというシロップがまた上品で、ちょっと大人な新感覚の杏仁豆腐でした。それぞれの良さがあるので、これは食べ比べるのがおすすめ。

プーアール茶をベースに金柑、陳皮、干葡萄、菊花、白きくらげ、サンザシが入った「薬膳茶 南風(冷)」。
ほのかな甘さを感じる見た目も美しいお茶です
急須で一杯ずつ淹れる、プーアール茶(温)。小さなビスケット付がうれしい

メニュー開発や料理は、同じく熱海に移り住んだ夢乃さんの母・裕美子さんがおもに担当しているそう。夏には冷麺、新年には草粥など、季節限定のメニューも登場すると聞き、食べてみたい気持ちがむくむく……。また季節が巡った頃にぜひ訪れたいところ。

都会の喧噪から離れ、季節を感じながら薬膳メニューでからだを労わる。「薬膳喫茶gekiyaku」はそんな過ごし方が叶う、大人の隠れ家的スポットでした。

薬膳喫茶gekiyaku
〒413-0034 静岡県熱海市西山町32-25
TEL:080-5876-3692
営業時間:11:00~17:00
定休日:月曜~木曜

【おまけ】「Himono Dining かまなり」で、未活用魚のサバを使ったカレーパンをテイクアウト

最後に、こちらはまちの中心部にあるスポットですが、水野さんが手がけるカレーパンがあるとお聞きして、駆け込みで「Himono Dining かまなり」にうかがってきました。

江戸時代から150余年続くひもの店「釜鶴」が運営する「Himono Dining かまなり」。その店頭でテイクアウトできる「小さいサバの大きなカレーパン」は、水野さんが代表を務めるプロジェクト「熱海千魚ベース」から生まれた、サイズが小さくて市場に出回りにくい“未活用魚”のサバを使ったカレーパンです。

その長さ、なんと22cm! 実際に使われているサバと同じくらいのサイズであるものの、市場では30cmに満たないと価値が付きづらいのだそう。そんな「小さい」と言われてしまうサバたちが、カレーパンになることで「大きい!」とみんなから喜ばれるようになる。……そう考えると、シンプルにとても素敵な取り組みだなと感じます。

熱海のまちづくりに携わるなかで、地元の海の豊かさをあらためて知り、「より多くの人に熱海の海に興味を持ってほしい」と願う水野さんの思いが詰まったカレーパン。そのお味は、想像以上にサバの旨味が凝縮されていて、取材班一同「これはおいしいぞ……」と思わず唸るほど。

食べながら、今日一日眺めてきた美しい熱海の海に思いを馳せられる、旅のラストを締めくくるにふさわしいカレーパンでした。

Himono Dining かまなり
〒413-0013 静岡県熱海市銀座町11-6
TEL:0557-81-2263
営業時間:

レストラン 8:00-16:00(LO15:00)
テイクアウト 8:00-15:00
定休日:火曜、水曜

「求めていたのって、こういう旅だよね」

取材班の間でたびたび出てきたのが、この言葉でした。車で好きな音楽をかけながらのんびりと巡り、熱海の穏やかな自然やおいしいもの、そしてまちの人たちのあたたかさに触れて、心身ともに回復していくのを感じたこのドライブ旅。

「熱海の有名どころはもう回りつくしたしなあ……」と心のどこかで思っていましたが、車で足を伸ばせば知らない熱海がたくさんあって、帰る頃にはホクホクとした充実感で満たされました。今回はご紹介しきれませんでしたが、熱海にはまだまだ魅力的な穴場スポットがいっぱいあるはず。車で気軽に移動できるからこそ、自分のとっておきの場所を見つける冒険をしてみるのも、楽しいかもしれません。

日頃の疲れを癒すために、ひとりで存分にリフレッシュするもよし、少しだけ日常を離れて大切な人と思い出づくりをするもよし。今度の週末は車に乗って、ゆったりと軽やかな熱海旅をしてみませんか?

※記事は2026年5月時点の内容です。

熱海周辺のおすすめEV充電スポット

取材・執筆:むらやまあき
撮影:山中散歩

この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!
EV充電アプリ利用者数No.1のEV充電エネチェンジ公式アプリ|全国の充電スポット検索・App Store / Google Playダウンロード EV充電アプリ利用者数No.1のEV充電エネチェンジ公式アプリ|全国の充電スポット検索・App Store / Google Playダウンロード

※EV充電サービス5社によるiOS・AndroidのDL数(2025年11月28日時点、data.ai調べ)

目次