「世のちり洗う四万温泉」と、上毛かるたにも詠まれた群馬県・四万温泉は、上信越高原国立公園の懐に抱かれた静かな温泉地。近年は奥四万湖の神秘的な青「四万ブルー」が話題を集め、写真を目的に訪れる人も増えていますが、その魅力は絶景だけにとどまりません。 今回は、生まれてからずっと四万温泉で暮らし、実家が100年続くお土産屋さんだという四万温泉協会 宮崎博行さんに、ガイドブックに載らない四万温泉の楽しみ方をお聞きしました!
教えてくれた人 宮崎 博行(みやざき ひろゆき)さん
四万温泉協会 勤務。四万温泉出身。実家は温泉街で約100年続くお土産屋で、父親も長年観光業に従事してきた観光一家育ち。大学時代の4年間を埼玉で過ごした以外は生まれてからずっと四万温泉で暮らす。現在は四万温泉の魅力発信や観光振興に携わっている。
定番観光スポット「四万ブルー」は、湖だけじゃない!

ーー四万温泉といえば、まずこれ!という魅力を教えてください。
やはり最近では「四万ブルー」が大きなキーワードになっています。奥四万湖は、ダムによって造られた人造湖で、湖面がすごく綺麗な青色に見えます。それを目当てにお越しいただく方が多くなりました。

ーーガイドブックには載らない、「四万ブルー」の楽しみ方はありますか?
実は、四万川沿いを散策すると「四万ブルー」を見られる場所があるんですが、あまり知られていないかもしれません。四万温泉は縦長の温泉地で、四万川に沿って源泉が湧き、温泉宿や温泉街ができました。四万川の浅瀬では透明な青、川幅が広く深くなると濃い青、と変わっていくグラデーションを歩きながら楽しめますよ。
源泉42本。宿の数より多い、湯の町の底力
四万温泉には源泉が42本あり、宿の数34軒を上回るほど。無料で入れる共同浴場も3カ所あり、いずれも源泉かけ流し・地元民は24時間利用できるという。
宮崎さん:「温泉街の中には、わざとお風呂を作っていないお宅もあって、共同浴場に入りに行くんです。地元の人は浴場の合鍵を持っていて好きな時間にふらっと入りに行く。四万は5つの地区がありますが、それぞれにそういう共同浴場があります。
毎日決まった時間に来るおばあちゃんが2日来ないと、体調を崩して倒れていた、なんてこともありました。ただの温浴施設じゃなく、地域のコミュニティなんです。」
観光客も利用できる時間帯がある共同浴場もあるそう。ローカルな会話と温泉にどっぷり浸かるにはぴったり!
四万の+αグルメ:粉もの文化と、海なし県のお寿司

ーー食べ物で四万温泉ならではのものを教えてください。
群馬県は粉もの文化が盛んで、四万温泉にも「おきりこみ(おっきりこみ)うどん」という郷土料理があります。太かったり幅広だったりする田舎うどんで、山菜や野菜と一緒に煮込む料理です。家庭料理としても親しまれていて、飲食店でも食べられますし、幅広のうどんをお土産として買うことができます。
ーー宮崎さん、個人的な食べ物のおすすめはありますか?
「一力寿司」というお寿司屋さんです。群馬県は海なし県なのに、お刺身がすごく好きな県民性があって。四万温泉に来てお寿司屋さんへ行くという発想はあまりないと思いますが、料金もリーズナブルでとてもおいしいんです。ぜひ行ってみてください。
名物和菓子「夢まくら」も忘れずに

温泉まんじゅうの名店、楓月堂が作る和菓子「夢まくら」は、四万温泉に伝わる開湯伝説を模したお菓子だ。その伝説は、源頼光四天王のひとり、日向守碓氷貞光がこの地を訪れた際、夢枕に「四万の病脳を治する霊泉を授ける」との神託を受け、湯が湧き出したというもの。
求肥にくるみあんとゆずあんを包んだ上品な甘さで、四万温泉を代表する人気土産のひとつだ。
国立公園の自然と、レンタサイクルの旅

四万温泉は上信越高原国立公園内にあるため、手つかずの自然が残っている。川の浸食でできた大小8個の穴が並ぶ「四万の甌穴(おうけつ)群」は群馬県の天然記念物で、温泉街から気軽に歩いて行ける。
宮崎さん:「電動アシスト自転車のレンタサイクルを4月〜11月末に運営していて、年間2,000人以上に利用してもらっています。温泉街は駐車場が少ない場所もあるので、自転車だと狭い道も楽に走れますし、気軽に止まって写真も撮れる。ブレーキやスピードで再生充電するタイプなので、環境にも優しいんです。」
何もしない、が贅沢。リピーターが愛する時間の使い方
ーーリピーターさんにおすすめの過ごし方はありますか?
川沿いのベンチに座って、川を見ながらずっと動かない方がたまにいらっしゃいます。朝は人通りも少ないので、川の音を聞いて、時間を忘れてぼーっとする。都会ではなかなかできない贅沢な時間です。先日お会いした常連の方は「川の音を録音して、自宅で聞きながら寝るとよく眠れる」とおっしゃっていました(笑)。最近はクリエイターの方が四万温泉に滞在しながら創作活動をする取り組みも行っており「目が良くなった気がする」という感想も聞かれましたね(笑)。1,000メートル級の山々に囲まれた緑豊かな環境が、五感をリラックスさせてくれるのかもしれません。
※記事は2026年6月時点の内容です。
画像提供:四万温泉協会
四万温泉周辺のおすすめEV充電スポット
筆者:菅原茉莉
「聴く・書く・撮る」インタビュアー。岩手県盛岡市から国内外へ赴き、出会った人の言葉や日常の風景を記録している。ラヂオもりおかパーソナリティ(『evening stroll』毎週月曜担当)。走ることが好き。
