草津・有馬と並ぶ「日本三名泉」のひとつ、岐阜県・下呂温泉。千年の歴史を持つ美人の湯でよく知られるこの町に、ガイドブックには載っていない楽しみ方があるとしたら?
店ごとに味が違う郷土料理「けいちゃん」、隠れた絶景スポット、地元民が愛する地酒とブランド米「龍の瞳」。15年間の東京生活を経て2025年に故郷へUターンした下呂温泉観光協会の細江未来さんに、定番とその先を教えてもらいました。
教えてくれた人 細江 未来(ほそえ みく)さん
下呂温泉観光協会に勤務。中学卒業まで下呂市で育ち、進学・就職を機に上京。15年間の東京生活を経て2025年に故郷へUターンし現職に就き、下呂の魅力を発信している。
ーー下呂温泉にきたらまずはこれ!という定番の魅力を教えてください。
やっぱり一番は温泉ですね。メディアでも「美人の湯」として取り上げていただくことが多く、女性のお客さまはもちろん、最近は若い方もかなりいらっしゃいます。特に3月末の卒業旅行シーズンは学生さんのグループで賑わいますね。
ーー「日本三名泉」と呼ばれる由来は?
約千年前から湧き出ていると言われており、江戸時代の儒学者・林羅山が著書の中で「草津・有馬・下呂は特に優れた温泉地」と記したことが始まりとされています。単純温泉で、とろみのある柔らかいお湯が特徴です。
湯めぐり手形でお得に3カ所を制覇

2,500円で3カ所の旅館の日帰り入浴が楽しめる「湯めぐり手形(下呂温泉旅館協同組合が発行)」は、下呂を初めて訪れる人にも、何度も来ているリピーターの人にもおすすめのアイテム。通常1カ所1,000〜1,500円のところ、タオルと巾着袋までついてこの価格はかなりお得。高台の露天風呂から温泉街を一望するもよし、川沿いのせせらぎを聞きながら湯につかるもよし。それぞれ個性の異なる温泉を満喫できる。

ーー温泉以外の下呂の魅力といえば?
ぜひ一度食べてみてほしいのが飛騨地方の郷土料理「けいちゃん(鶏ちゃん)」です。鶏肉を味噌や醤油などのタレに漬け込んで、野菜と一緒に炒める料理として親しまれています。下呂は昔から養鶏が盛んで、卵を産み終わった親鶏を美味しく食べる知恵から生まれたと言われています。
ーーけいちゃんの「正解の味」はあるんですか?
実は、決まったレシピがないんです(笑)。醤油ベース、味噌ベース、塩ベースとお店によって全然違います。地元の人はそれぞれお気に入りの店を持っていますし、家でオリジナルのタレを作って楽しむ家庭も多いですね。私の家にも市販の味噌2袋と醤油1袋を混ぜるという秘伝のレシピがありますよ(笑)。
もう1つの名物「漬物ステーキ」

飛騨地方には「漬物ステーキ」という個性派料理も存在する。白菜の塩漬け「切り漬け」を塩抜きし、卵でとじて鉄板で炒めた一品だ。塩味がきいておりご飯のお供にも酒のつまみにもなると、地元の飲み屋で長く親しまれてきた。「先週も家で作りました」と細江さんが語るほど、日常に根付いたソウルフードだ。
お酒とブランド米も見逃せない

下呂市内の金山町・萩原町には「奥飛騨酒造」と「天領酒造」の2つの酒蔵があり、どちらも酒蔵見学を受け入れている。個人旅行者もツアー客も足を運ぶ人気スポット。さらに、粒が大きく甘みの強いブランド米「龍の瞳」や、そこから派生した「銀の朏(みかづき)」も下呂が誇る食の逸品。道の駅や土産店でぜひ手にとってみたい。

ーー何度も下呂を訪れているリピーターさんにご案内したい場所は?
「縄文公園」の近くにある「縄文橋」という歩行者専用の橋です。路線バスが通っていないので車か徒歩でしか行けない場所なんですが、そこから見える景色は想像以上にきれいです。観光客の方がよく行く温泉街の高台とはまた違った、生活感のある住宅街や小学校が見渡せる素朴な風景で、私も大好きな場所ですね。

ーーおすすめの季節はありますか?
春夏秋冬それぞれ違う顔がありますが、個人的には紅葉の季節が一番好きです。赤や黄色に染まった山あいの景色は本当に美しいです。静かな山の空気と降ってきそうな満天の星を楽しめますよ!
ーー15年ぶりに戻った下呂はどうでしたか?
かなり変わったなと思いましたね。私が上京したころはちょうど宿泊客が少なくなっていたタイミングで、古い建物も目立っていました。でも帰省のたびに新しいお店ができていたり、建物がきれいになっていたり。今は若い方が営むお店も増えて、だいぶ活気が戻ってきていると感じます。

ーー地元の方々は観光客をどんなふうに迎えていますか?
下呂は住宅地と観光地が本当に近い場所なんです。だからこそ地元の人も「来てくれて嬉しい」という気持ちが強くて、フレンドリーでウェルカムな方がとても多いですね。観光でいらしたお客さまも、その温かさを感じてリピーターになってくださる方が多い気がします。
日常のすぐそばにありながら、非日常を感じられる下呂温泉。ぜひ遊びに来てくださいね!
※記事は2026年6月時点の内容です。
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筆者:菅原茉莉
「聴く・書く・撮る」インタビュアー。岩手県盛岡市から国内外へ赴き、出会った人の言葉や日常の風景を記録している。ラヂオもりおかパーソナリティ(『evening stroll』毎週月曜担当)。走ることが好き。
