愛知県は豊橋市にやってきました。

名古屋めしの一つと言われ、近年ますます注目度が高まっているのが「あんかけスパ」。
その元祖とも言われる系譜の味わいを豊橋の地で守り続け、豊橋のソウルフードとして60年以上愛される味があります。

あんかけスパゲッティの生みの親とされるのが、横井博氏です。横井氏は1961年に親類との共同出資で「そーれ」を開業し、1963年には自身の店「スパゲッティハウス ヨコイ」を立ち上げました。
その横井氏のもとで修行し、1965年に豊橋駅前の地下で誕生したのが、今回紹介する「スパゲッ亭チャオ」です。

現在は豊橋市を中心に6店舗を展開しています。

豊橋の本店前に来ました。なんだかこのシェフのキャラが気になりますが……お店の人に聞いても「素性は誰も知らない」とのことでした。

ムードのある階段を上がって2階の店内に入ると……これまた、ステンドガラスを使ったロマンチックな店内が姿を現します。


イタリアをイメージした造りらしく、デートコースにもいい感じ。

今回は長年同店の歩みをそばで見てきた、株式会社大木家 ブランディング推進チームの江﨑雅英さん(顔出しNG)に貴重なお話を伺います。
豪快にうまい!「バイキング」
江﨑さんいわく、「ヨコイさんで修行させていただいてスタートしたのが始まりなので、教えていただいたメニューが基本になっているとは思われます」とのこと。
ぶっちぎりの人気を誇るのが「バイキング」(1,050円)。あんかけスパの3分の1のオーダーがこれだといい、店にいてもどんどん注文が飛び交います。
一般的なあんかけスパは多くの場合お皿で提供されますが、スパゲッ亭チャオは70円増しでお皿を鉄板に変更可能。ジュージューと音を立てる鉄板は、見た目にも食欲を刺激し、最後まで熱々で食べられます。鉄板の底には溶き卵が敷かれるのもうれしいところ。

具材はチキンカツとウインナーがたっぷり載り、ゆで卵のそぼろがふりかかっています。好きなものが満載で童心に帰ってかぶりつけるような一皿です。
一方、ルーツにあたるヨコイの「バイキング」は、チキンカツではなく白身フライにウインナー、リング玉子を合わせたもの。なぜここでチキンカツに変わったのか、その経緯はわからないそうです。


そして2.2mmの太麺! これはヨコイにあんかけスパを教わって以来そのままで、外はカリッと、中はもちっとした食感に仕上げています。

まるで小学校高学年の頃に戻ったように、わんぱく心いっぱいに完食しました。
フライドポテトをドーンと載せて人気
ヨコイから譲り受けた基本のメニューの他にも、なかなか他店では見られない独創的な一皿が多いのもスパゲッ亭チャオの魅力です。
その中でも代表作なのが「ミラノ」(1,080円)。なんとフライドポテトをふんだんに載せており、あんかけスパ界でもなかなか類を見ない一皿ですが、長らく2番人気を保持しています。

江﨑さんによると、「学生や女性客向けにフライドポテトを載せた」とのこと。おそらく1965年のオープン当時からあったのではと言われており、当時は目新しかった具材にウインナーを合わせて完成したそうです。
「一時期は、炭水化物のパスタの上に炭水化物のポテトでいいのかみたいな捉えられ方もしてましたけど、ずっと人気ですね」
ちなみに東海地区には鉄板で提供される「焼きそば定食」という炭水化物を重ね合わせるようなメニューが長く親しまれており、親和性があったのかもしれません。

ポテトとウインナーの組み合わせは、どこかハンバーガーセットを思わせる親しみやすさ。嫌いな人がほとんどいない「フライドポテト」をメイン具材にするからこその、とにかくポップな味わいです。


ポテト、ウインナー、太麺を一緒に頬張ると、意外なほどしっくり。長年2番人気を守るだけの完成度です。
チャオソースのひみつ
これらの基本となるのがトマトを基調としながらも、独特の食欲をそそる風味を醸し出す「チャオソース」です。
かつては修業先のヨコイに近いソースでしたが、いつからか本来のしっかりした味は残しつつもマイルドな味に改良し、より多くの人々に向けた味わいとなって親しまれているとのこと。
じゃがいも、人参、玉ねぎを煮込んでペースト状にします。それにトマトピューレ、トマトペースト、牛肉、ニンニク、塩、胡椒を混ぜてかくはんし、オーブン(220℃)で8時間熱し、最後に片栗粉でとろみをつけて完成します。

見てのとおりたっぷりの野菜と肉を煮込んでおり、江﨑さんも「肉・野菜・卵とさまざまな食材に合う」と自信を持って語ります。 ソースをたっぷり絡めていると、終盤に配分が心配になることも。そんなときは追加ソース(50円)も注文できますが、自分なりのペース配分を考えながら食べるのもこの店の楽しさです。
超チャオマニアが勧める一皿
東海の人気ローカル番組「PS純金」(中京テレビ)では、スパゲッ亭チャオに通い詰める常連のお2人を「チャ王」として紹介。そのうちお1人は来店回数1000回以上という筋金入りで、2人がそろってオススメしているのが「ミラクルスパ」。
江﨑さんが「ソースがほぼ隠れるほどにわんぱくなメニュー」と語るとおり、ポークピカタ、カニクリームコロッケ、エビフライ、ウインナー、ヒレカツを一度に盛り合わせ、タルタルソースを添えたオールスターのような一皿。

番組でチャ王のおすすめとして紹介されて以降、注文が目に見えて増えたそうです。
そして冬シーズンに熱烈な支持を集めるのが「カキスパ」です。浜名湖の舞阪産の牡蠣フライをゴロッと3個使用し、シーズン中は人気ベスト3に入るほどだとか。
江﨑さんが「大ぶりの牡蠣でしっかり味もするし、地元の漫画家さんも好きでアピールしてくださるので、ますます人気になりました」と語るとおり、「だもんで豊橋が好きって言っとるじゃん!」の作者・佐野妙さんはXのプロフィールに「カキスパ」と書いているほど(2026年7月現在)。

静かな人気の「ナポリタン」
スパゲッ亭チャオの人気上位にはあんかけスパが並びますが、その中にあって、あんかけではない「ナポリタン」も売れ筋に入るそうです。
とはいえ、オーソドックスな皿盛りではなく、熱々の鉄板で、下に卵を敷いて食べる愛知式のナポリタンです。

江﨑さんが“濃い目の味”と語るとおり、まさしく「ザ・ナポリタン」の味を強めにしっかり楽しめる一品です。底の卵を麺と絡めて味わいの変化も楽しめます。

店によっては「カレー」だってあるぞ
また、店ごとにメニューが少し違うのがスパゲッ亭チャオの特徴。立地やFCオーナー自身の好みから独自のメニューを展開するなど、比較的自由度が高いそうです。

本店は駅前の店なので酒とつまみを充実させています。取りそろえる酒類は、ソムリエ資格を持つ地元酒店の担当者と試食・試飲を重ね、ここの料理に合うものを選んだそうです。
ちなみに名古屋にはスパゲッ亭チャオで働いたご主人が独立した「スパゲッティハウス シェフ」という人気店があります。
「2店出していて、うちの伝統製法をしっかり守る店です」と江﨑さんも推薦。
名古屋でスパゲッ亭チャオの系譜を感じたくなったら、シェフを訪ねるのもよさそうです。
夢は首都圏・全国へ
スパゲッ亭チャオはホームタウン・豊橋でどう愛されているのでしょうか。
「保守的な街だとは思うんですけど、それがゆえに一つのお店にすごく愛着を持ってくださるので。60年続けているのは、特に地元のお客様、よく通ってくださるお客様のおかげです」
好きになった店を長く大切にする地元客に支えられ、スパゲッ亭チャオは豊橋で確かな地盤を築いてきました。さらに次を見据えており、江﨑さんもこう語ります。
「あんかけスパをもっと広めたい。地域だけで知られる食べ物じゃなくて、誰もが知るようになれば、日本中が商圏にもなるわけですから。首都圏への出店も夢は見ていますし」
あんかけスパをメジャーにするために、メディアや地域の活動にも積極的に協力しています。

豊橋から全国展開を模索するスパゲッ亭チャオのあんかけスパ。最後にお客さんへのメッセージをいただきました。
「温かいですよね。厳しい言葉も受けますけど、でもそこには『いつもの好きな店だから』と愛情が感じられて。60年続きましたが、70年、80年、100年と続けていけるように、お声もしっかり受け止めて、より良い店を作れたらなと思います」

まるで豊橋駅前の空に残るスペースシャトルのように、豊橋の人々に愛され、いつか首都圏・全国へと飛び立つかもしれないスパゲッ亭チャオ。
まずは豊橋で、熱々の鉄板あんかけスパを味わってみてください。スペースシャトルではなく、EVに乗って。
※記事は2026年7月時点の内容です。
豊橋周辺のおすすめEV充電スポット
筆者:辰井 裕紀
ライター、番組リサーチャー。過去に秘密のケンミンSHOW(NTV系)などを担当し、ローカルの食文化と飲食チェーンを軸に、その土地で愛されるワケに迫る。著書に『強くてうまい!ローカル飲食チェーン』(PHPビジネス新書)。卓球とガジェットも好き。
