愛知県豊田市。あの6年連続で自動車販売台数世界1位のトヨタグループの本社がある街です。
さらに、同じくこの豊田に本社を構える、店舗数全国No.1を誇る車検専門チェーンが「車検のコバック」。
この「車検のコバック」を運営する会社が、実は「台湾ケンさん」という台湾ラーメン店を豊田市を中心に4店舗展開しています。
その存在を知り、ワクワクしながら訪れたのが台湾ケンさん四郷店です。

このケンさんって⋯⋯誰? と思う人もいるでしょうが、実はこれ、車検のコバック代表・小林憲司さんがモデル。

四郷店にはここにしかない「ドライブスルー」も。台湾ラーメン店がドライブスルー? さらに梅坪駅前店を拠点に、車による企業・団体向けのランチ宅配まで行っています。

いったいなぜ、「車検のコバック」が台湾ラーメン専門店を立ち上げたのでしょうか?
その謎を解き明かすために、株式会社コバックダイニングス 外食事業本部 執行役員本部長の堀田篤司さんにお話を伺いました。

堀田さんはかつてイタリアンのシェフで、さらに和食・沖縄料理・とんかつ・カフェなど数々の業態を経て、台湾ケンさんの2016年の事業立ち上げから実務面で店を支えている方です。
車検のコバックが老舗町中華の経営を継いだワケ
この台湾ケンさん、実は1984年創業の豊田の人気台湾料理店「味珍」の事業と味を引き継いで生まれたもの。
味珍の台湾ラーメンのファンで、常連客でもあったコバック代表の小林憲司さん。店主が道路拡張工事を機に閉店を考えていると知り、「この味をなくすのはもったいない」と事業の継承を決めたそうです。
台湾ラーメンをはじめ、もともとあった主要メニューの作り方は軒並み継承しており、味珍ファンもよく来ます。さらに社長が全国行脚をする中で、各地でさまざまな料理を食べ歩いて培った食通の舌も生かして新メニュー開発に当たっているとか。
それにしても、なぜ店名とイメージキャラにまで社長が出てくるのでしょうか?
堀田さんいわく、「明朗会計の車検のコバックのように、誰でも入りやすいというところが、このケンさんのキャラクターにつながっていると思います」とのこと。

辛さまで無料で変更可能、“ちぢれ麺”の台湾メン
台湾ケンさんは日本人に合った中華料理店を追求するということで、「和風台湾料理」がコンセプト。そんな店の断トツ人気メニューといえば……「台湾メン(黄金醤油)」(748円)です。

なかなかスパイシーで、辛いもの好きにも満足できるほどです。本場中国・山東省および河北省産の唐辛子を100%使用し、キレのある辛さを醸し出しているのだとか。
さらに、台湾ラーメンといえばストレート麺が多いのですが、ここの特徴は「ちぢれ麺」。モチモチとした中太のちぢれ麺で、台湾ラーメンの魅力の新しいドアを開けています。
かみ応えよく、実にウマい。堀田さんによると「コストがかかる作り方なので、本当は変えたいけど続けている」そうです。

さらに、台湾ミンチは肉々しさがあり、辛味が徐々に立ち上がります。
「我々の場合はミンチを炒めてから、水と余分な油を切り、ザルでこしてから改めて煮込みます。煮込み続けるとちょっと臭みが出ますから、捨てる工程を入れるわけです」
そう語る堀田さん。煮込んだしょうゆを台湾メンの返しに使うことで、「スープを飲み干したくなるような味わい」になるとか。
「辛味好きだけど激辛は少し苦手」という筆者にはスープを飲み干すのは辛いですが、モチモチの麺も相まっておいしくいただきました。

それにしても、なぜ「台湾ラーメン」ではなく“台湾メン”としているのでしょうか。

堀田さんいわく、「台湾ラーメンを全国に広げていきたかったので、辛さを自分好みにできるようにしました。ニンニクの有無や量も卓上で自分好みに調整できて、台湾ラーメンではなかなかなかったトッピングも豊富に用意しています。唯一無二の台湾メン、という意味で台湾メンと名付けているんです」とのこと。
辛さは「味変」「辛旨」「極上」「地獄」の4段階から選べ、「地獄」のみ税込110円増しです。

「常連さんはとにかく“こいつ”をうまく活用しますね」と、卓上調味料を指して語る堀田さん。そこには、「台湾辛味」と、刻みニンニクとおろしニンニクがありました。ニンニク2種はうれしいところ。

常連さんは「味変」という最も辛さの少ないバージョンを頼んで、この卓上調味料で味を加えていくのが定番だそうです。
堀田さんいわく、「うちのコンセプトは『誰でもいつでも食べられる台湾ラーメン』でニンニクを抜けるから、サラリーマンの方が昼から味わえます」とのこと。
ちなみにコバックの小林社長は辛さが大好きだそうですが、堀田さんは辛さが苦手。対照的な2人の好みから、幅広い客に対応できる仕組みにつながったといいます。
さらに2番人気は派生形の「台湾担々メン」(814円)。濃厚かつクリーミーで女性を中心に人気とのことで、「本当にリピートが多くて、一度これを頼むと、次からも台湾担々メンばかり選ぶようになる人が多い」とか。

クリーミーな甘みが台湾ラーメンの辛さと合わさって、「この辛さがちょうどいい」と思えました。筆者もまんまとリピーターの一人になってしまうかも。
なお台湾まぜそばと二郎系の台湾ケンジローは極太麺を使っていて、全粒粉入りで食べ応えもあり、「ガッツリ食べたい人がよく頼む」とのこと。

なお台湾ケンさんにセントラルキッチンはなく、全店個別で作るからこそ、目の前の料理人の作りたてがその場で味わえるわけです。
豊田市は工場などで体力を使ってやってくる客も多いので、ボリュームは大前提で、提供スピードも意識しているとか。だから税込110円で大盛りにもできます。
あえて「しっとり」のチャーハン
常連客が欠かさないのが「ニンニクチャーハン」(並715円)。“口臭は諦めてください”と堀田さんが語る一品です。口に含めばニンニクの香りと味わいがにじみ出ます。

それにしても、チャーハンに「しっとり」を前面に出してるのは珍しいもの。

しかし、「パラパラチャーハン」だけを声高に評価する流れへのカウンターとして、最近は町中華などで食べられる「しっとりチャーハン」が静かなブームとなっています。
堀田さんも「パラパラ、パサパサすぎるよりも水分も残ってしっとり食べられるぐらいが良い」と話すとおり、ちょっと水分を感じるこの食感が心地いいのです。

ふっくらと炊きたて感のあるライスは、「日本人好みの“和風台湾料理”を掲げるからこそ、米にこだわりをもつ」と山形県産米を使用。ランチは小ライスが無料です。
手羽先は「煮る」が正解かも!
サイドメニューも充実しているのが全世代型中華料理店の台湾ケンさんらしいところ。
「台湾ミンチ和えポテトフライチーズ」(小418円)は、子供が頼んでみたいと思うものを目指した遊び心が形になったもの。

「唐辛子は使っていますが、チェダーチーズのソースで辛さを抑え、お子様でも食べやすい味に仕上げています」と堀田さん。
いざパクつくと、「ハンバーガーを分解して食べている」のに近いおいしさでした。チーズと肉とポテトが織りなす味の中で、唐辛子の刺激は控えめ。チーズのマイルドさで全体をまろやかにまとめあげています。
さらに、堀田さんの一番のおすすめメニューが「台湾手羽煮」(3本429円)。
手羽先と言えば揚げるイメージが強いところ、あえて「煮る」一品。これも味珍のレシピのまま、一度寝かせてからまた味を染み込ませるなどのひと手間を経てできあがります。

一口頬張ると、「手羽先は煮るのが正解だった」と思えるほどのおいしさ。
照りのあるタレのうまさ、丸みのある甘みに辛味がじわっと来ます。肉の脂がたっぷり乗って、それをしゃぶり尽くすのが最高です。


実は今も店頭に立っている堀田さん。今日いろいろ作ってくれましたが、最後にいただいたのは、夜のおつまみメニューでは一番人気という「青菜炒め」(792円)です。

じんわりやさしいしょうゆ味のつゆがたっぷりと菜っ葉に染み込んでいて、ピチッとみずみずしい感じ。安心できるおいしさでした。
なぜ台湾ラーメン店にドライブスルーがあるのか
そして、これらの商品の多くを車に乗ったままテイクアウトできるのが、この四郷店にある「ドライブスルー」。
車検のコバック母体の店らしいサービスですが、「車社会の豊田市で気軽にテイクアウトができる手段として導入された」そうです。

それにしても台湾ラーメンなど、汁物が多いのになぜドライブスルーが可能なのでしょうか?
それは、汁物がこぼれないようになっている特別な容器に入れるから。「高くて他店が使わない」というほど、コストがかかっているのだとか。

また、梅坪駅前店を拠点に企業・団体向けのランチ宅配も行っており、月間に800〜1,000食ほど出て、固定客が少しずつ広がっています。
そんな台湾ケンさんは将来、どのようなお店を目指しているのでしょうか。堀田さんに伺いました。
「いつもそばにある台湾ラーメン店になって、愛知県のみならず全国に広がっていきたい」。
いつか、全国に550店舗ほどある車検のコバックのように、台湾ケンさんの姿を見かけることがあるかもしれません。それまでは愛知県豊田市界隈で味わえる、ローカルのおいしさを享受しましょうか。
それでは社長の顔が目印の、面白くてウマい店までEVに乗って出かけましょう。

豊田市周辺のおすすめEV充電スポット
筆者:辰井 裕紀
ライター、番組リサーチャー。過去に秘密のケンミンSHOW(NTV系)などを担当し、ローカルの食文化と飲食チェーンを軸に、その土地で愛されるワケに迫る。著書に『強くてうまい!ローカル飲食チェーン』(PHPビジネス新書)。卓球とガジェットも好き。
