埼玉県八潮市に来た。クルマでなくてはなかなかたどり着けないような場所にある今日の目的地は、創業1977年、2026年で50年目を迎える「珈琲屋OB」のログ八潮本店。
唯一無二の喫茶チェーンとして、埼玉で名を轟かす存在なのだ。

まずこの店の特徴と言えば、大がかりなログハウス調の店舗である。

数十年前、当時の価格で5,000~6,000万円をかけて大家さんに建ててもらった店舗を借り、家賃を払って運営している。

1.8リットルのアイスティー、降臨
ここで、アイスティー(650円)を頼んだのだが……お店の方に持ってきてもらったものが、とんでもなかった。

「金魚鉢」になみなみと入っているぞ!?

笑顔とともに、とんでもなく大きいアイスティーが出てきた。
しかも、ガムシロップ入れはピッチャー!

味はほんのりした苦みで飲みやすく、ガムシロップを入れると筆者のような子ども舌とも相性バッチリ。
しかし「これだけ飲んでもまだこんなにある」といった印象。完飲までが果てしなく、飲んでも飲んでも減らない!

それもそのはず……なんとこのアイスティーは1.8リットルを誇る。650円でこれほどの量を楽しめるとは、謎の末恐ろしさを感じた。
……と、ド迫力のドリンクメニューが看板商品になっているカフェチェーンなのである。
ファミレス対策で1リットル級ドリンクたちが爆誕
珈琲屋OBは、系列の「カフェOB」と合わせて、埼玉を中心に14店舗展開しており、「自由にできて、目が行き届くから」という理由で全店直営。筆者も何度か来店している。
ちなみに冒頭の女性は、有限会社珈琲茶館オービー 本部長の千葉薫さん。OBを知り尽くす彼女に話を伺った。

まず伺いたいのは、なぜこれほど飲み物が大きくなったのか?
千葉さん「昔、周りにファミレスが出来始めて、他店との差別化のために、巷で見かけなかった『飲み物の大盛り』を始めたら、お客さんが喜んでくれて。そうしたら花瓶や金魚鉢に飲み物を入れるとか、どんどんこうなっちゃって」
そう、巨大ドリンクはファミレスブームに対抗する手段だったのだ。
クリームソーダも1リットルあり、人気商品。まるで優勝カップのような器で出てくる。

アイスが2玉も入っており、否応なくテンションが上がる。

クリームソーダらしく強い甘みを感じ、溶けたアイスクリームから、また違ったクリーミーな甘みが生まれる。
千葉さん「ジュースも濃いめに作っているのね。長い時間飲んでも薄くならず、おいしく飲めるように」
そんなホスピタリティを感じながら飲み進めるが……とにかく量が多い。アイスティーと相まって、腹がタップンタップンになった。
「もうしばらくはこんなに飲まなくてもいい」というくらい、思い切り堪能した。珈琲屋OBには、このような1リットル級のドリンクがいくつもあるのだ。
ある種パーフェクトな巨大パフェ
そしてこの店、もう一つの名物がパフェだ。

花瓶のようなワインのデキャンタで出てくる、高さ40センチを超えるパフェである……しかも、何やら下に大量の飲み物が入っている。
千葉さん「パフェだけだと、ほら、なんか飲み物飲みたくなっちゃうじゃない。じゃあパフェと飲み物を一体化させちゃおうかみたいな。ジュースとパフェの両方を楽しめる」
そんな豪快な発想で生まれたパフェだが、チョコパフェなら900円で楽しめる。筆者が選んだバナナジュースのパフェでも1,050円だ。このパフェを目指して来るお客さんも数多いという。

ちなみに、パフェの独特な顔立ちも気になるが、盛り付ける人によって様々な顔立ちになるという。とくに「レーズンによって顔が変わる」そうで、その置き方が腕の見せどころなのだとか。
アイス2玉を使ったパフェと、甘さ控えめでコクのあるバナナジュース。わんぱくに平らげ、たっぷり満足できた。
実は自家焙煎コーヒーが断トツの一番人気
飲み物の人気ランキングを伺うと、いきなり意外な名前が飛び出す。
千葉さん「断トツでコーヒーが出ます。うちね、自家焙煎コーヒーが本当は売りなんだ」
1階の入り口の横を見てみると、大きな焙煎機が鎮座しており、全店で提供するコーヒー豆を煎るという。

千葉さんいわく、自家焙煎したコーヒーは「煎りたて・挽きたて・淹れたてで全然違う」という。
「でも、焙煎したてよりも2日ぐらい経った方が美味しいんですよ、煮物と一緒で。だけど焙煎したては香りがすごいんですね」

焙煎作業は週3日くらいで、土曜に行うことが多い。千葉さんいわく「風向きによっては、1キロ先まで匂っているみたい」とのこと。コーヒーのいい香りをたどって歩くと珈琲屋OBにぶつかるかもしれない。
コーヒーも、1リットル級とまではいかないがなかなか大きい。ホットコーヒーはたっぷり360ml、さらにアイスコーヒーは中ジョッキで登場し、500mlのビッグサイズだ。

ホットのブレンドコーヒー(430円)をいただくと、ほのかな焙煎の香りが鼻に抜け、後味スッキリ。普段使いしやすいおいしさだった。
コーヒーはブレンドのほか、モカ、コロンビア、ブラジル、グアテマラ、キリマンジャロなど各種をそろえ、ブルーマウンテンも比較的安く楽しめる。
自家焙煎と大量仕入れにより、コーヒー豆も100gあたり450円とリーズナブルな価格で販売している。
ラーメンみたいなスープパスタがうまい
千葉さん「メニュー、基本的にあまり変えないのね。創業50年目で、ログ八潮本店が始まって35年なんだけど、十品ぐらいしか変えてないんじゃないかな」
そんな中で筆者がイチオシのメニューは、本店限定のスープパスタ「キノコスパゲティ」(1,000円)。麺も具材もたっぷり、満足感をじわじわかき立てられるスープでツルッとうまい。

千葉さん「キノコにはスープがいいかなと思って。ラーメンみたいなスパゲティでしょう」
たしかにラーメン気分で楽しめる一杯だ。
さらに、お得感たっぷりなのが「ハーフハム玉子サンドセット」(サラダ・ポップコーン付/680円)。
もともとはレギュラーサンドのみだったが、最近ハーフができた。
千葉さん「今『シェア』ってあまり流行ってないじゃない。なので、一人ひとり食べられるように半分の食べきりサイズにして」
しかし、このハーフサイズですら見てのとおり大きい。これだけでおなかがしっかりふくれるほどである。

ほんのり辛味のあるマヨネーズドレッシングがきいてクリーミー。さらに分厚い玉子の層が楽しめ、ハムが堅実に土台をささえるボリュームサンドだ。

セットのサラダはさっぱりとしたしょうゆ系のドレッシングがかかり、葉物が中心でさわやかに楽しめる。
「マヨネーズとかドレッシングとかピザソース、オイルとか黒蜜も全部手作りなんですよ」と千葉さんが語るとおり、随所にお手製の味が楽しめる。
ちなみに、「チーズピザ」(880円/ランチ850円)はその名の通りチーズ主体の潔いピザである。

ほのかなチーズのうまみをシンプルに楽しめる薄焼きのピザで、調和を乱さないコーンなどの具材が並び、チーズを引き立てる。あんまり具材が乗っていないシンプルピザが好きな人、これですよ。
「むやみに食器を下げない」ポリシー
実は珈琲屋OB、原則的に「飲み終えたグラスや空いた皿をむやみに下げない」ことを心がけている。
千葉さん「喋ってるときとかに『お下げします』って店員の手が出てくると嫌じゃないですか。『ポップコーンが1個残ってんねん。食べたかったのに』とかってありますから。お客様のところには必要以上に干渉しないのがポリシーです」
たしかに、ちょっと強引に皿を下げられたときは、「帰れ」というような圧を感じることすらある。
千葉さん「氷だけになっていても、薄いジュースを飲みたくなるときがあるじゃないですか。従業員も無駄な動きしなくていいし、お互いに楽ですから」
いつでも「ほっとかれ感満載」の接客
最後に、お客さんへのメッセージをいただいた。

千葉さん「お店に来て、居心地のいい時間を過ごしてもらえれば、それでいいって感じかな。今の世の中さ、いろいろあるじゃない……落ち込んだときに来てもいいし。うれしいときでもいいし。うちは“ほっとかれ感”満載なんでね」
千葉さん「毎日来る人もいるけど、特にこちらから声はかけないんです。来なかったからって『昨日どうしたんですか?』とも聞かない。そうすると、毎日来なくちゃいけないと思ったり、来なかった理由を言わなくちゃいけなくなったりするじゃない。だから、いつもどのお客さんにも同じような接客。自分も楽だしね」
とりあえず、何となくいてもいい。個人店的なところがありながら、チェーン店の気楽さも併せ持つのが珈琲屋OBなのかもしれない。

駅に近く、セルフサービスでよりリーズナブルに楽しめる。珈琲屋OBほどではないがたっぷりサイズのドリンクも多い
それではお会計を……ちなみに珈琲屋OBには、「OB券」という10%オフの券が存在する。店舗・公式サイトで配布しており、何回でも使用可能。こんなに太っ腹なのはなぜか?

千葉さん「お財布に入れといてもらえれば、いつもOB を思い出してもらえるから」
つまり、小さな宣伝隊長なのだ。
ちなみに飲み物の量が多いため、「必ずトイレに入って帰りますね、みんな」と千葉さんは語る。筆者も食べている途中でトイレに行ったが、本店では入り口の正面にトイレがあり、難なく位置を把握できるので安心だ。

巨大な飲み物から、小さな気遣いまで。「びっくり箱」にとどまらず、心地よく普段使いされるからこそ、50年目まで愛されてきたのだ。
珈琲屋OBでは本店をはじめ、郊外の店舗では駐車場が大きく取られていて、車で立ち寄りやすいことも、日々利用されるワケなのだろう。

最後に、店外で飼われている猫(茶々・メス)にあいさつでもして。魅惑のカフェチェーン・珈琲屋OBへ、EVに乗って出かけよう。
筆者:辰井 裕紀
ライター、番組リサーチャー。過去に秘密のケンミンSHOW(NTV系)などを担当し、ローカルの食文化と飲食チェーンを軸に、その土地で愛されるワケに迫る。著書に『強くてうまい!ローカル飲食チェーン』(PHPビジネス新書)。卓球とガジェットも好き。
