『秘密のケンミンSHOW』など数々の人気番組でリサーチ・構成に携わってきたライター兼番組リサーチャーの辰井裕紀さんが、全国のEVドライバーに「ぜひ行ってほしい」スポットを紹介する本企画。今回は八王子に本店がある唯一無二のラーメン店「壱発ラーメン」をご紹介します。
西東京を代表する都市・八王子市。約55万8,000人もの人口を抱え、大小の店舗が軒を連ね、大学も多く活気ある街です。
八王子といえば……まず思い出すのが「八王子ラーメン」。あっさりスープにタマネギが載ったシンプルながらクセになる味わいで、提供店も多く筆者も好きなラーメンですが、今日はひと味違った一杯を食べに行きます。

ものすごいコールの嵐……!?
八王子駅からも近い幹線道路沿いを歩くと、何やら赤い看板と、いかにも活気がありそうなお店が目に飛び込んできます。

この赤い屋根の店こそ、長野県から上京し、その後さまざまな仕事に就いた西澤良一さんが一念発起し、1984年に立ち上げた「壱発ラーメン」です。
店名は「壱(一)からのスタート、商売で壱(一)発当てたいといった願望」から名付けられたのだとか。
「チラシは使わずお客さんの口コミだけで集客」がモットーで、今に至るまでシンプルな公式サイトがあるのみ、公式SNSもありません。

こここそが、まれに見るほどパワフルで勇気がもらえるラーメン店なのです。期待を込めて店内に入ると、すでに活気が満ちていました。

「良い食べっぷりで! 励みになります!」
「チャーシュー満開!」
などのフレーズが飛び交っている……!? このかけ声は、「ラーメンと同じように温かい心と心の触れ合いを大切にする」という精神に基づいているそうです。
運営する壱発コーポレーションの部長兼八王子店の店長・西澤富由樹さんによれば、相模原店、福生店も同じようにコールを行っているとか。
声の出し方のトーンは店員さんによって微妙に変わり、その人ならではのスタイルを感じさせるので、その発声やアクションの違いまでも楽しみましょう。
とろろがドーンと載った花型チャーシュー麺?
象徴的一杯が、昔からの人気メニューで店一押しの1つ「ネギとろチャーシューメン」(1,300円)です。
「どんぶりに咲く壱輪の花!」
という、何ともよくそろったコールとともに登場しました。
当時はチャーシューを花のように並べるのは珍しかったらしく、「チャーシューの花びらのキレイな並べ方」にはこだわっているそうです。
それを来店したマキシマム ザ ホルモンのボーカル、ダイスケはんが「どんぶりに咲く壱輪の花」と言い表し、それをコールとして使わせてもらったのだとか。

塩気のあるチャーシューに、ドドッととろろが絡んでくる面白みのある食感。そして、ひと味違ったおいしさが口にあふれます。
「ネギとろ」というからには寿司ネタのネギトロでも入っているのかと思いきや、「ネギ」と「とろろ」のことなのです。
とろろを入れる理由は、「毎日食べても大丈夫なラーメン」を目指しているから。青森産のとろろを使用しており、全体で3割ほどのお客さんがとろろ系メニューを注文しており、トッピングで「とろろマシ」にする人もいるそうです。
味玉を頼むと「元気玉」ポーズが!?
細めの麺は柔らかく煮込まれており、スープの香りはあの現代の大ヒットラーメンにも通ずるものを感じました。

スープは昔から豚骨をコツコツ煮出し、背骨とげんこつの部分、まさに骨だけで旨味を引き出すという、今では珍しい手法で作っているそうです。
さらに前日に骨だけを一度沸騰させてその煮汁をすべて捨て、翌朝から改めて煮出すことで臭みが取れ、関東人に愛されるクセのない豚骨スープに仕上がるわけです。
ちなみに、壱発ラーメンでは「半熟味玉」(100円)を頼んだときに……
「元気玉!」
と、みんなでコールしてくれます。

このポーズについても、西澤部長が教えてくれました。
「お客さんと一緒にストレッチするような感覚で、自分たちの健康も兼ねてやっています。ラーメンを作っているとずっと下向きなので肩が凝るんですけど、『元気玉』をやるようになってからはストレッチ効果があって、最近は妻に肩もんでと言うことが減りました」
なんと、自分たちの健康まで兼ねたパフォーマンスなのだそうです。
お客さんもときどきコールに参加するほか、たまにお店全体でコールが沸き起こることも。そこにお子さんが参加すると、思わず笑みがこぼれます。
どんぶりを上げたら、「どんぶり助かります!」など、お客さんをねぎらってくれるのもうれしいものです。

健康にいいラーメンへの挑戦
壱発ラーメンには、
「毎日食べられるラーメンを」
「体にいいラーメンを食べて元気に」
というモットーがあります。
そのためには「野菜も摂ったほうがいい」と考えており、多くのメニューは野菜たっぷりで、国産の大根やネギが載っています。
その象徴の一つが、1997年ごろに生まれ、女性客を中心に人気を博す「だいこんラーメン」(900円)。

「大根のでんぷん分解酵素・ジアスターゼが消化吸収を助ける」とうたう一杯。なお、ジアスターゼは熱に弱いため、千切りの生大根で食べさせてくれる、念の入れようです。
そしてこれが「めかとろチャーシューメン」(1,200円)。こちらもめかぶの“フコイダン”と、とろろの“ムチン”による健康効果をうたっており、スタミナ切れの僕らも食べたくなる一杯です。

それもあってか、「飲酒後に食べると調子がいい」と語る、お酒を飲んだ方々のリピーターも見られるのだとか。
つけめんで「激辛高菜ファイヤー!」
後日、もう一度訪問しました。壱発ラーメンでは「つけめん」も推しているため、それを食べたくなったのです。
頼んだのは人気の「ねぎつけチャーシューメン」(1,200円)。さらに、50円を追加して味噌味にしました。

つけめんは並・中盛り・大盛りまで同料金。今回は「中」を頼みました。

ほんのり酸味と辛味を漂わせた食べやすい味噌味のつゆが、トロッとして麺に絡みつく。細麺も相まって懐かしさを感じさせつつ、今も十二分においしく味わえます。

上肩ロースを使った薄切りチャーシューは脂が乗って柔らかく、夢中になって味わえました。何枚もあるのもいい感じです。

味変がしたくなったら卓上の豆板醤や、「特製 壱発の酢」を入れましょう。
壱発の酢は結構味が変わるので、後半に少しずつ入れるといいと思います。

さらに「激辛高菜」(100円)を頼むと、
「激辛高菜ファイヤー!」
と、このようなポーズとともにコールしてくれます。

その理由は、ほかのお客さんにも「辛いですからね」と匂わせる意味もあるのだとか。

いざ食べてみると、高菜自体はピリ辛程度に感じましたが、スープに辛味が広がるため、どんどん後から辛さが出てきます。なるほど、軽く注意喚起する意味がわかりました。

中盛りでしたが一気にペロリ。たくさん食べる人なら「大」でも問題ないと思われます。
毎日食べようと思えば食べられて、パンチの強さで食べる人をダウンさせない、日々長く楽しめそうなつけめんでした。
メダカのプレゼントも?
そんな壱発ラーメンの社長の趣味は「メダカの飼育」です。
それもあってか、なんと希望するお客さんにはメダカを一匹プレゼントしています。
しっかりした容器を持参するのが条件で、さらに入店時に「ラーメンの後にメダカがほしい」と告げておくとスムーズだそうです。

そして、
「良い食べっぷりで! 励みになります!」
そんな言葉を背に受けて、気持ちよく席を立つのでした。
八王子は学生街のため、「昔食べていました」と懐かしんでやってくるお客さんも多く、中には東京23区内から毎週食べに来る方もいるとのこと。
こうした学生の多さが、ボリュームのあるラーメンにもつながっているそうです。
なお、すべてのコールを100%やってくれるわけではないようなので、「もしコールがあったらラッキー!」と思いましょう。
とにかく活気がありエンタメ空間としても最高。ポジティブな言葉を浴びて一種のセラピーのようにさえ感じました。
暑くもなく、寒くもなく、花粉の少ない今こそが一番のお出かけ日和かもしれません。心地よい風を受け、EVで出かけましょう。
※記事は2026年4月時点の内容です。
壱発ラーメン近くのおすすめEV充電スポット
筆者:辰井 裕紀
ライター、番組リサーチャー。過去に秘密のケンミンSHOW(NTV系)などを担当し、ローカルの食文化と飲食チェーンを軸に、その土地で愛されるワケに迫る。著書に『強くてうまい!ローカル飲食チェーン』(PHPビジネス新書)。卓球とガジェットも好き。





