三陸自動車道を降りて約15分、港町の気配に溢れる宮城県気仙沼市。復興とともに日々変わっていくこの街には、映画のシーンのような景色とあたたかい人々が待っていました。
気仙沼に暮らし、「この街の魅力を伝えたい」という想いから、妹さんと共に小冊子「気仙沼偏愛ZINE」を制作した編集者の佐藤文香さん。気仙沼で共に歩む仲間たちの想いやライフスタイルを詰め込んだ、地元愛溢れる一冊を手掛ける彼女に、気仙沼のおすすめスポットを紹介いただきました。
お話を伺った人:佐藤文香さん
宮城県気仙沼市出身。2022年の秋にUターンして、文章や写真で気仙沼に暮らす日々を発信しています。海と散歩とおいしいものが好きです!
◉佐藤さんが考える気仙沼の魅力
気仙沼の魅力は語りきれないほどあるのですが、夏はカツオ、秋はサンマ、冬はメカジキや牡蠣など、一年を通して旬の海の幸を堪能できるのが贅沢だなぁと感じます。
それから、港に漁船がずらりと並ぶ景色。街のシンボルとも言えるこの景色に、いつも元気をもらっています。船や人が出入りする港町ならではのオープンな気風も好きなところです。
気仙沼には、豊かな食や漁業、個性あふれる飲食店やそこで暮らす人々など、この街を好きになるきっかけが至る所に散りばめられています。
ぜひドライブを楽しみながら、あなただけの好きなポイントを見つけに、車で足を運んでみてくださいね!
01. 磯屋水産・K-port


ドライブの最初の目的地は、内湾の静かな海沿いにある「磯屋水産」。水揚げ日本一を誇るメカジキをはじめ、港の活気が詰まった気仙沼の海の幸が並びます。 隣には黒く、モダンな建物「K-port」。ここは俳優・渡辺謙さんが「つなぐ」をコンセプトに開いた場所です(現在は次なる進化へ向け充電期間中、とのこと)。
東日本大震災の年の秋、気仙沼の蔵元「男山」へ取材に訪れた渡辺謙さんを、「ALL気仙沼」でもてなす場が設けられました。漫画「美味しんぼ」では、日本一の焼き魚と記された名店「福よし」の店主が腕を振るい、「男山」の美酒とともに、磯屋水産の安藤社長がとびきりの魚を用意。気仙沼の粋を集めた心温まるその夜が、「K-port」プロジェクトが立ち上がる原動力となったのです。

安藤社長:謙さんとの食事の席で、「福よし」も「男山」も、津波で流された元の場所で再建する覚悟を語り合っていました。私も海のすぐ近くに土地を買ったと伝えると、謙さんから「そこで何がしたいのか、絵に描いてみてくれないか」と声をかけてもらって。その言葉を受けてスケッチブックに描いた絵がK-portの原案になりました。
震災のとき、ガソリンやインフラがない状況って本当に不便でしたよね。だからジムや自転車屋もここにあったらいいな、と思って。

安藤社長:スケッチブックに夢を描いたあと、プロジェクトは少しずつ現実へと動き出していきました。設計の段階まで進んだ時、謙さんが「せっかくこれだけの思いを込めて建てるんだから、それを形にしてくれる建築家にお願いしてみましょう」と、ご縁をつないでくださったんです。それが、仙台メディアテークなどを手がけられ、建築のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞した伊東豊雄先生でした。
それだけでなく、メニュー開発にはフランスの最高勲章も受章した、日本を代表するフレンチの巨匠・三國清三シェフが関わってくださったりと、謙さんとの出会いをきっかけに、各界のトップランナーたちが気仙沼に力を貸してくれるようになったんです。あの日スケッチブックに描いた1枚の絵が、まさかこんな素晴らしい形で実現するなんて、本当に夢のようですよ。

安藤社長:K-portが閉まってからは、謙さんから毎日、男山と磯屋水産の店舗に直筆のFAXが届くんですよ。俳優として世界を舞台に活躍している人が、1日のうち数分でも気仙沼のことを考えてくれている。それがずっと続いているんです、震災からずっとね。その気持ちが、どれだけ俺たちの力になったかわかりません。
こうして誕生した、あの黒く独創的なフォルムの「K-port」。俳優の舞台となる芝居小屋をモダンにアレンジしたようなその空間は、2025年12月に惜しまれつつ幕を下ろしました。ですが、安藤社長によれば、すでに新たなステージへ向けた準備を進めているそうです。
新鮮な海の幸を選びながら聞く、気仙沼の復興と心温まるご縁のお話。

安藤社長:これ、メカジキの中落ち。お値段お手頃なのに、抜群においしいですよ!
佐藤さん:そうですよね、これは気仙沼ならでは!
ー へぇー! 初めて見ました。あ、こっちにはモウカザメの心臓?!
安藤社長:これはレバ刺しの代用品として人気があってね、ごま油と塩で食べるのがおすすめ。車だったら氷入れて箱詰めするよ!
佐藤さん:ツヤツヤでおいしそう……よし、私、中落ちとモウカザメどっちも買います!
安藤社長:俺たちも一番楽しみにしているのは、やっぱりカツオ。カツオの時期になったらまたおいで!
02. 喫茶マンボ

昭和の面影を残す「喫茶マンボ」の扉を開けると、ふわりと漂うのはコーヒーの香り……ではなく、食欲をそそるキムチの香り。 「喫茶店なのにキムチ?」と驚くことなかれ。この意外な組み合わせこそ、地元の人々が愛してやまない気仙沼のソウルフードです。
週末には行列ができるほどの人気店で、店内はいつも家族連れや常連客で賑わっています。 「私もよく来るんですけど、いつ来ても地元の人がいっぱいなんですよ」 そう語るナビゲーターの佐藤さんも、この店の虜になった一人。


ー すごい、キムチたっぷりの豚キムチだ。
佐藤さん:そうなんですよ。キムチたっぷり。普通は「豚肉たっぷりで、キムチは和えてある程度って感じですけど、ここはキムチがメイン。
ー たしかに。…キムチの野菜がおいしい、サクサクしてる。
佐藤さん:マンボって何屋さんなんでしょう?(笑)
ー キムチ専門の方がいるのかな。キムチを突き詰めてる方と、ラーメンとかを突き詰めてる方、別だよね。だってラーメンもすごくおいしい。
佐藤さん:推測ですけど、お母さんやおばあさんなのかなってずっと思ってます。ちゃんと聞いたことないんですけど。気になりますね。

ー 可愛い。もう満足(笑)
佐藤さん:階上は私の地元なんです。昔からイチゴ産地で、小学校のころにも農業体験はあったけど最近ブランドとして定着してきた感じがします。余計な具が入ってないんですよね、イチゴと、クリームとアイス。
ー 酸っぱい、冷たい、甘い、このバランスがたまらないですね!

ー キムチ、いつから作ってるんでしょうか?どなたか専門の方が?
店員の方:震災前からですね。私ではなくて……「キムチ部」が作っています。
二人:キムチ部!?
なんと、厨房には「キムチ部」なる部門が存在しているのだそう!全国発送、通販もしているそうです。ラーメン、いちごパフェ、そしてキムチ部。知れば知るほど奥が深い喫茶マンボ。
03. 道の駅 大谷海岸

気仙沼ドライブ、最後の目的地は「道の駅 大谷海岸」です。目の前には広い海。 ここは映画「すずめの戸締まり」の舞台モデルの1つとも言われ、ファンにはたまらない聖地でもあります。

佐藤さん:おすすめは…ご当地キャラクターの「ホヤぼーや」グッズですね。あとは「クリームサンド」! 気仙沼のソウルフードです。
ー あ、ピーナッツクリームサンド!おいしいって聞いたことがあります!
佐藤さん:「金のさんま」も間違いないです。一口サイズで食べやすくて。
気づけばお土産カゴはずっしりと重くなっていました。佐藤さんいわく、気仙沼あるあるなんだそう。

佐藤さん:夕方の静かな海もいいんです。
ー 気仙沼ってポテンシャルがすごいですね。景色も食もだけど、人がみんな「豊か」な感じがします。
佐藤さん:わかります。みんな余裕があるというか、楽しんで生きてる感じがしますよね。
初めて来たのに、なぜか懐かしい。そして、また「ただいま」と帰ってきたくなる。 潮風と人情、そして新しいカルチャーが混じり合う気仙沼は、訪れる人の心までするりと解きほぐしてくれる、そんな場所でした。
気仙沼観光におすすめのEV充電スポット
ホテルルートイン気仙沼中央インター(1 口)


三陸自動車道「気仙沼中央IC」から車で約2分という好立地。広々とした大浴場で手足を伸ばせば、ドライブの疲れも湯に溶けていきます。
筆者:菅原茉莉
「聴く・書く・撮る」インタビュアー。岩手県盛岡市から国内外へ赴き、出会った人の言葉や日常の風景を記録している。ラヂオもりおかパーソナリティ(『evening stroll』毎週月曜担当)。走ることが好き。





