EVへの関心が高まる一方で、実際に日常使いしているユーザーの「生の声」は、まだそう多くはありません。「充電は面倒ではないか」「ガソリン車から乗り換えて後悔しないか」そんな不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。
今回は、大学進学を控えた17歳の息子さんとお父さまの「Aさん親子」のエピソードをご紹介します。お二人がEVを選んだ理由は、単なる車好きというより「最先端技術への知的好奇心」から。
EVを購入したのはお父さまでしたが、今やその魅力に誰よりも熱中しているのは息子さんのほうなのだとか。その熱量は、購入者であるお父さまを圧倒するほどだといいます。取材は、そんな「EV愛」に溢れる息子さんに対応いただきました。デジタルネイティブな息子世代の視点と、新しい技術を積極的に取り入れる父世代の想い。お二人の想いを代弁していただく形で、これからのカーライフの形をたっぷりと語っていただきました。
今回お話を伺った方: Aさん(17歳)
- 家族構成: 父・母・Aさん
- 住まい: 東京都・マンション(共用部に普通充電器有り)
- EV歴: 2024年5月〜 ボルボC40
― EVを購入するまでの経緯を教えてください。
きっかけは、以前乗っていたボルボのハイブリッド車が車検を迎えたことでした。購入から3年が経ち、次の一台を検討し始めたのですが、同じようなガソリン車に乗り換えても新鮮味がなく、あまり購買意欲が湧かなかったんです。
また、私自身Z世代として、日々気候変動による環境問題を肌で感じる中で、「今、新たな行動を起こさなければ、30代・40代、そして高齢者になるころには、地球はもっと住みにくくなってしまうのではないか」という危機感を抱きました。「EVなくしてカーボンニュートラルの実現は難しい」この思いから、EVを取り巻く課題や可能性について、懐疑的だった父に毎日プレゼンしていました。父は現在61歳で、年齢的にこれから先、あと何台の車に乗れるか分かりません。「それなら、守りに入るよりも新しいことに挑戦しよう」そんな思いが、EVへの乗り換えを後押ししました。
― お父さまは昔から車がお好きだったのですか?
いえ、違います。実は私自身もそうです。ただ、父は以前からスマートフォンや半導体といった最先端技術には関心を持っていました。私の影響から、いわば「テクノロジーの塊」であるEVに興味を惹かれた、というのが正しいかもしれません。購入の決め手になったのは、ボルボならではの安全性の高さと、世界で初めてGoogleのインフォテインメントシステムが搭載されていた点でした。車両システムと統合しており、タイヤの空気圧などの異常を感知した際にはすぐにディスプレイに表示される優れものです。「これならスマホ感覚で便利に使えるはずだ」と、家族の間でも話題になっていました。
― 試乗体験が衝撃的だったそうですね。
はい。青山の「Volvo Studio Tokyo」で、2時間ほどじっくり試乗させていただきました。セールスを一切されない場所なので、純粋に「体験」に集中できるんです。
そこで乗ったC40で一番驚いたのが、エンジンのスタートボタンがないことでした。シートに着座センサーが付いていて、座ってDレンジに入れるだけで、すぐに走り出せるんです。「電源を入れる」という概念すらない。そのシームレスな操作感に、親子で「これはすごい、未来だ!」と感動して、その場でほぼ購入を決めました。
― 実際にEVに乗り換えて、生活や考え方に変化はありましたか?
父はよく「車が1つの家電製品になったようだ」といっていますね。かつて固定電話が携帯電話に進化したように、EVも「単なる人を運ぶ箱」から、使いこなすことで生活が劇的に便利になる「デバイス」へと進化したと感じます。車としての基本機能は同じでも、その中身は全くの別物です。
EVを購入してからまだ2年足らずですが、その間にもバッテリーのリサイクル技術や性能向上など、新しい技術が次々と発表されており、その飛躍的な進化には日々驚かされています。
また、私の車は非対応ですが、現在発売されているEVの中には「V2H(Vehicle to Home)」機能が備わっているモデルもあります。この機能を活用すれば、EVがバックアップ電源として停電などの非常時に大いに役立ちます。さらに自宅に太陽光発電設備がある場合は、昼間に蓄電し、夜間はEVから家へと給電することで、電気の「自給自足」も可能になります。こうして考えると、EVは暮らし全体を支えるエネルギーインフラの一部になりつつあるのだと感じます。
― コスト面でのメリットは感じますか?
購入前、営業担当の方から「ランニングコストが安い」と聞いてはいましたが、父も私も「本当にそこまでコスパが良いのか?」と、実は半信半疑だったんです。
ところが実際に運用してみると、コストはガソリン車時代の1/2から1/3程度まで下がりました。これには家計も大助かりで、「営業担当の方の言葉は本当だったんだ」と実感しています。EVは、ガソリン車などの内燃機関に比べ部品点数が約3分の1と大幅に少ないため、内燃機関を搭載した車では定期的に必要なオイル交換が不要でブレーキパッドの交換頻度が減るのもコスト削減に大きく寄与していると感じています。ハイブリッドが普及した時のように、車両価格はガソリン車に比べ高い反面、燃費がいいからHEVを選ぶ、そのような感覚に近いと考えます。
ただ、驚いたこともありました。納車後初めての夏、炎天下に1週間ほど駐車していたところ、全く乗っていないのにバッテリーが10%、航続距離にして40〜50km分も減っていたのです。「故障かな?」と怖くなってディーラーに確認しましたが、異常はありませんでした。実は、バッテリーを適温に保つよう自動で冷却機能が働いていたからでした。そのようなEVならではの挙動も、一つひとつ実体験として学んでいるところです。
― 走行性能や、長距離ドライブでの使い勝手はいかがですか?
想像以上に静かで、車体が軽く感じます。アクセルを踏んだ時のレスポンスが良いので、加速時のG(加速度)による身体への負担がガソリン車よりも少なく感じますね。
長距離ドライブは月に1回ほど、東京から栃木県の宇都宮まで往復しています。距離にして約300kmですね。出発時に充電残量が80%あれば、宇都宮まで行って市内を周回し、東京に帰ってきてもまだ10%ほど残ります。前述したGoogleインフォメントシステムのおかげで目的地到着時のバッテリー残量の予測が表示されます。目的地に到達しない場合は、自動的にルート上の充電スポットで何分充電する必要があるかまで計算してくれます。この予測を下振れしたことはほとんどなく、本当に頼り甲斐があります。EV購入間もないころでもこの機能により、長距離ドライブでも安心でした。

― マンションにお住まいとのことですが、充電はどうされていますか?
マンションの共用部に6kWの普通充電器があり、普段はそこで「基礎充電」を行っています。これがあるおかげで、何不自由なくEVライフを送れています。自宅に3kWでもいいのでコンセントがあれば、EVライフの快適さは劇的に上がると思います。通勤や通学など、毎日決まった距離を移動する方には特におすすめです。
一方で、外出先の充電インフラにはまだ課題も感じています。認証システムがバラバラで、「ここはENEOS、ここは日産ディーラーだから専用カード、あそこはEV充電エネチェンジ……」といった具合に、使い分けが非常に煩雑なんです。給油みたいに現金やクレジットカードで直接決済するのではなく、アプリを介したり、充電専用カードがないと利用できないというのも利便性が高いとはいえず、早急に改善すべき課題だと思います。
また、コンビニなどに設置されている急速充電器も2台同時に充電できないことが多いですよね。なかなか充電利用の目的だけでは行きづらい中古車販売店などに充電器が新規で設置され始めていますが、その前に必要な場所・利便性が高い場所に新規設置・増設をしていただきたいです。充電スポットの数ではなくユーザーエクスペリエンスを高め、使いやすさに焦点を当てた今後のさらなるインフラ整備に期待したいところです。

― 最後に、これからEVの購入を検討している方にメッセージをお願いします。
EVライフを楽しむためには、「充電」という言葉のイメージを変える必要があると思っています。ガソリン車なら「残りが少なくなったら満タンにする」のが常識ですが、EVはそうではありません。自宅充電(基礎充電)が基本です。最近では宿泊施設にも普通充電器が設置されていることが多いので、継ぎ足し充電が不要な場合も多くあります。
たとえば、高速道路で2時間ほど走ったら、サービスエリアやコンビニで休憩しますよね。その際、トイレや買い物のついでに10分でもプラグを挿しておけば、それだけで一般的に普及している充電器でも100-150km分航続距離は伸びます。ガソリン車の感覚からすれば、『短い!』と思う方も大勢いらっしゃると思いますが、これだけ回復すれば年に数回の帰省や旅行の際では十分な性能ではないかと思っています。
「わざわざ充電しに行く」のではなく、「休憩のついでに充電する」。この感覚さえ掴めれば、ハードルはグッと下がるはずです。もし頻繁に遠出をする方やそれでもなかなかEVには抵抗がある、そんな方へは100キロ程度EV走行ができ、それを超えてお出かけの際はガソリンでHEV走行ができるPHEVもおすすめです。
最後に父からも検討中の方へメッセージがあります。 「何事も経験で、慣れてしまえばそれほど難しくないと感じるはずです。実際に利用してみれば、不安よりも安心感や満足感をより多く味わえるでしょう。ガソリン車を長く愛用してきた方も、次世代のモビリティとして、これを機にぜひ新しい感覚を体感してみてください」
購入した2年以上前は、どの自動車メーカー・ディーラーでも試乗車や展示車がないような状況でしたが、今ではどこへ行っても試乗車がある状況です。今年・来年と各社からEVが続々と登場していく中、車の乗り換えを検討する際の1つの選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。






